エメラルド

ファンタジーポエム

そらた


空が泣き出しそうなこんな夕刻時には
またあの子にあえるような気持ちがしてくる


あの子の顔おもいだしては
少し涙ぐむ


空太
きっとまた会える


空の上から見てる?
いまも






由美子は空を見てました
あの日の由美子は友達とはぐれて
思いもよらぬ暴言まで
浴びせられて
子供ながらに失意のどん底にいたんだ


空を見ていた


空を見上げてないていた


すると鉛色の雲が現れ瞬く間に
大きな雨粒が落ち始めた


由美子は傘もない


なすすべ持たず
傘も持たず
雨にびしょぬれの由美子


涙の帰り道
雨と涙でぐしょぐしょ


由美子はもうすべてが嫌に
なるような投げやりな気持ち
生まれ始め


もうどうでもいい


そんな風に心底疲れてしまった




ふと
由美子は雨のなか由美子と同じ


傘も差さない男の子がいることに
気づいた


しかもその子は
由美子とは雲泥の差


本当に楽しそうに
濡れている


雨粒たちとダンス
華麗にステップ



そしてその子は
由美子に気付くと
ステップふみながら
由美子の目の前に
きていた


そして
にっこっと


八重歯が印象的だった


由美子は泣いていたことさえ
忘れてそのかわいらしい笑顔をみていた


その子は小さく頷いて
手を差し出した


由美子はその子の手に触る
驚くほど冷たい手


その子は言ったっけ


おれ空太


今日の由美子のかなしみは
すべてお見通しさ


なぜって?


空から見てたから


由美子は顔を赤らめる


ちょっと恥ずかしくなる


友達と喧嘩してこころがボロボロの
夜に不思議な男のこと出会った


空太はもう一度
手を差し出して


おいで
ダンス教えてあげる


由美子は躊躇うことなく
空太の手をとった


2人雨のなかの
舞踏会


気づくと仔犬がワルツを踊って
普段濡れるのを毛嫌いする猫は
気持ち良さげにけのび


にゃーにゃー


気持ち良さそう


仔犬は踊り猫はのびのび


雨のなか
なんて不思議な夜なのだろう


由美子は夢見ごこちの
空太とのときを


いつのまにか
こころから


笑っている


こころの奥になにかが芽生え
そうして空太にも
負けない笑顔を取り戻していた


空太は由美子に見とれて
こともあろうか足を滑らせ
由美子と空太は



どてん



転んでしまった


半ズボンから膝小僧覗く
由美子の膝小僧は
うっすら血が滲んでいた


空太は慌てて青色のポシェットから
空色の絆創膏をとりだして
由美子の膝に貼ってくれた


由美子は怪我の痛みはなく
ただ絆創膏の青をみていた


由美子は空太にお礼をいう


空太はふっと微笑み
おまじないをしてくれた


大丈夫かい
大丈夫かい


由美子


由美子




大丈夫?


由美子
由美子



由美子は静かに目を開けた


そこには心配そうなおかあさん


そして


喧嘩したはずの瑞穂


由美子
大丈夫?
ごめんね


雨のなかあんなに濡れるくらい
傷つけてしまったのね


由美子は呆然として空太の
存在を探した


ゆめ


夢だったの



そう思った時由美子は
何かを発見した


そして笑って


夢じゃないんだ


いつの日か
また



由美子の膝には
鮮やかなまでの
絆創膏が
しっかりとはられていた

恋色



なぜ
こんなにもあなたを好きになった


なぜ
あなたにはきっと届かない


そう幻よりも遠い


春の日穏やかな陽だまり
欠伸する猫


猫好きなあなたはこの上ない幸せだと
笑う


冬を頑張って越した小さな命
そっと優しく抱きしめてる


近くで私はまぶしく見てる


加速してゆく
切ない心


いつからだろう
あなたの面影一人抱きしめる


そんな切ない癖がついたのは


いつからだろう


あなたの存在が大きくなりすぎて
こころ
破裂しそう



今夜も夢に堕ちてゆく


すきだよ